秀吉殿は大丈夫だろうか。
大殿と秀吉殿を二人きりにしてからかなりの時間が経った。中の様子は一切分からないが、信じて秀吉殿を待つ。
廊下の壁にもたれながら、もやもやとする頭を振り払う。しかしそう簡単に振り払えるものでは無くて、二人だけにしたことを後悔する。
そんな時中から声がかかった。
「半兵衛!おるんじゃろう?」
秀吉殿の声が聞こえる。いると返事をすると、中に入れと言われた。
秀吉殿の声が明るくて少し安心する。
この様子だと大殿としっかり話せたのだろう。
襖を開け部屋に入ると、二人は向き合って座っていた。
「半兵衛、藤吉が惚気話ばかりするんじゃが。」
大殿が呆れた顔をしながら口を開く。
それにしても藤吉?
何故昔の名なのだろうか。
「なっ!少ししかしていないではありませぬか!嘘を言わないでくだされ!」
秀吉殿が焦った顔をしながら、反論をしている。
少しはしたのだな。と嬉しく思ってしまう。
それなのに。

