「優‥ぁ。優たぁ…優太。」
何度も何度も僕の名前を誰かが呼んでいた。
ピーーッピーーッピーーッ(機械の音)
「優太。」
その声の持ち主は、聞き覚えのある声。
それは、父さんだ。
僕は、多分あの後トラックにひかれたんだろう。
だから全身半端ない痛みが襲っているのか。
そのせいか意識が確かにあるのに目が開かなかった。
父さんの声だけ聞こえる。
「優太…ッ。お前までいくな。」
父の泣きつかれたようなかすれた声が聞こえる。
「お前まで、沙恵のところに行かないでくれッ。
そしたら、父さんも寂しくなるじゃないか。」
口下手なあの父が、必死に僕に話しかけてる。
「父さん口下手だから優太とあまり話せなくて 優太には、すごく寂しい思いさせたね。」
そうだ。
僕は、とても悲しい思いをした。
帰って来ても誰も「ただいま」とは言ってくれない。
誰もいない家にずっと一人でいる孤独な気持ち。
「優太が久しぶりに話しかけてくれたと思ったら 一人暮らししたいって言い出した時。
父さん本当は、すごく寂しかった。
まさか、中学3年生で一人暮らししたいって言うなんて…。
一緒に暮らせなくなるのが寂しかった。」
次から次へと聞く初めての父の本音。
「父さん、こんなに早く一人になるかもしれないなんて思わなくて
母さんが、亡くなってからの初めてのわがままだったっから、父さん必死で書類書いて友人の不動屋さんに頼んだんだ。」
そう言えば、僕の新しい新居はオートロック付きマンションだった。
「なのにこんなことになるなんて…。
父さんは、どうしたらいいんだ。
どうしたらよかったんだ。
こんなことだったら、会社やめてもっといろんなところに優太を連れて行ってやればよかった。」
何回も父さんの仕事が、早く終わればいいと思った。
けど、父さんは僕のために頑張って働いてくれてるって分かっていたから何も言えなかった。
「父さんは何もしてやることもできない。代わってやることも…できないッ…。」
目が見えなくても聞いているだけでわかる。
声が震えていて、にぎっている手の力が強くなっている。
だから、父さんは今
泣いてるんだ。