その日は瞼が閉じるくらい綺麗な夕焼けだった。


放課後の廊下はシンとしていて人気が全くなかった。


大抵の人は帰ったか部活をしに行っていたから。



私はその中ではどちらにも当てはまらない、単なる日直の仕事を幼馴染と親友の三人でしていたはずだった。


職員室に日誌を届け教室で待っている二人の為に遅くならないようにと急いで戻ったのがいけなかったんだろうか。


リノリウムの廊下を本来はいけないけど走って教室へと向かうと段々声が聞こえてきた。


「(蓮華と要、待たせちゃったかな?」


そう思うと更に走る速度があがった。


蓮華は小さい頃からの幼馴染で、男の子なはずなのに私より綺麗で中学の時にはファンクラブなんてのがあったくらい。


だから幼馴染の私はよく女子から嫉妬の的だった。


けれど要はそんなことを気にせず孤立していた私に話しかけてくれた今ではずっと一緒にいる大親友。


要はとても可愛くどこか抜けていた所謂天然で声をかけられた時もたまたま持っていた苺味の飴を「それってさくらんぼ味の飴?」と聞いてきたくらい。


「(さくらんぼ味の飴って普通売ってるかな?)」


聞けば要は大のさくらんぼ好きで筆箱やノートにキーホルダー、至る所にさくらんぼづくしだった。


そんな要だからこそ私は親友になれたと思う。


だから私は要には蓮華が好きだったことも言った。


そしたら「頑張って!化菜ならいける!」
と応援してくれるぐらい。


だから思わなかった、要が私を裏切るなんて。



教室の扉を開いて「ごめん!待たせちゃったかな?」と二人に言おうと思い、扉を少しだけ開いた時だった。




私の失恋は_____


「_____」


「_____」


一瞬、


何が起こったのかが分からなかった。


その中で聴こえてくるのは自分の呼吸する声


思わず出そうになった声を手で抑える。






世界が止まったかのようだった






けど、それは私の脳内に酷く焼き付いた。


私の大好きな二人が互いに抱き合いキスをしていた。





「(嘘?___なんで?)」


なんで二人はキスをしているの?


なんで私じゃないの?


ナンデ?_____


沢山のなんで?が頭の中に積もった


気が付けば私は長い廊下をまた走っていた。


あの場所から逃げるように、ただ走っていた。


「(酷いよ要__どうしてっ!?)」


大好きな親友から裏切られた感覚と好きな人に言えなかった後悔を胸に刻んで。



涙を必死に堪えて。