「私のこと、覚えていませんか」 振り向いたおじさんにそう声をかける。 おじさんは、少し目を細めた。 「本多 沙菜です」 覚えていて欲しい、そう願って名乗る。 おじさんは、しばらく表情を変えずに私を 見つめた後、ニコッと微笑んだ。 「おお、あの沙菜ちゃんか」 そんなおじさんの表情は、あの頃と変わっていなかった。