(完)嘘で溢れた恋に涙する

それが1時間も続いて、やっと透が納得した服は、赤チェックのゆるっとしたひざ丈のワンピースだった。


可愛い、可愛いと繰り返す透に、店員さんはすかさずこれを足したらよりいいと近くにあった棚から黒の薄いベストを取ってから私に当てて見せた。


「確かにいいっすね。あ、あと靴もいいの選んでくれませんか?」


透は頷きながらそう頼むと、店員さんは嬉しそうに頷いて探しに行ってしまった。


服だけじゃなくて靴までも売っているのか。


「ってもういいよ。これだけで十分だって」


透は自分のお金で私に服を買うと言ってここに無理やり連れてきたけど、初めから買ってもらう気は全くなかった。


あまり財布の中にはお金はないけど一着ぐらいなら大丈夫だと思ったし、確かにまともな服を少しはもっておくべきかなと思っておとなしくついてきたのだ。


だけど、他にも買うとなったら確実にお金は足りず、買ってもらうことになってしまう。


それだけは避けたい。


私はそんなことをしてもらっても、何も返せない。


「いいからいいから」


なのに、透は無理やりベストを上から被せて、腕を通させた。


ベストは丁度いい丈で、ワンピースのふわっとした下部分がはみ出してすごくいい感じだった。


透がベストの下に食い込んでしまった襟の部分を出して、リボンを綺麗に結びなおして、私はなされるがままになっていた。


「ほら鏡見てみろよ」


そう言われて鏡の方を向かされて、その中に映る自分を見た。


こんな可愛い格好したのは久しぶりだ。


事件の前まではクローゼットには収まりきらないくらい服を持っていたけど、引っ越しするときに全部売り払ってしまった。


その後はまともな服を買うお金もなくて、お下がりをもらったり、安く買ったりしていた。


そのせいでついつい長時間鏡の中の自分を見つめてしまった。


そうしていると、かかとの少し上がったショートブーツを店員さんが持ってきて、透はそれを見ると満足そうに頷いた。


「これこのまま着て行っていいですか?」


次に透は私の着ている服を指さしてそう聞いた。


「ええ、もちろんです。タグを切らせていただきますね」


店員さんはほほ笑んで、持っていたはさみを持って私の襟のところにつけられていたタグのひもを切ってしまった。


口をはさむ隙間もなく、切られてしまい驚いた。


これじゃもう買わなきゃいけないじゃないか。


慌てて用意されたさっきのブーツを履きもともと着ていた服と靴を持ってレジに向かう透を追いかけた。


すでに財布を開けていた透に横から小さな声で自分で払うと訴えるけど、透は無視して会計を済ませた。


店員さんは私の持っていた服と靴を袋に入れてくれ、ショップの外まで私たちを見送ってくれた。