(完)嘘で溢れた恋に涙する

そこでようやく私は陸玖の腕から解放されて、その代わり手を強く握られた。


初めて陸玖の表情が見えたけど、陸玖のそれはよく読み解けなかった。


そして、辺りを見回してようやく状況を理解する。


さっきの金属音は鍵をかけられていたはずの正面の扉が蹴破られた音だったのだ。


今、その扉の前には身長が2メートルはあるんじゃないかというくらい高くて、恰幅のいい男の人だった。


あの人が陸玖の知り合いなのだろうか。


それにしてもあそこの扉が今開けられたというなら陸玖はどうやってここに入ってきたんだろう。


そんなことを考えていると、周りにいる男たちが不満そうに叫んだ。


「今度は誰だよ!扉まで破りやがって!」


「関係ないやつは引っ込んでろよ!」


今まで喋っていなかった人たちが吠えるが、あの金髪男の声は聞こえずその顔を見るとなぜか青ざめていた。


「何であいつがここに…」


「あいつのこと知ってんのか?」


「知ってるも何もあいつはあの南中の力武真だよ!!」


連中の話にはついていけず、有名人なんだろうかと首をひねっているが、その会話はどんどん白熱していく。


「は?んなわけないだろ!だってあいつはどっかに転校したっていう噂じゃねえか!」


「そんなの知らねえよ!でも俺はあいつを見たことがあるんだから間違いねえ!」


慌てふためく連中の姿に驚くしかない。


余程すごい人なのだろうか。


そこでその時まで無言に徹していた力武と呼ばれる男の人が連中の方に目を向けた。


「お前らの予想通り俺は力武真だ。
お前ら今度そこにいる2人に手ェ出したら、そん時はわかってるよな?
叩き潰してやる」


味方されてるはずの私までも縮み上がってしまうような低く地の底から聞こえてくるような恐ろしい声でその人はそう言って、鋭く目を光らせた。


言われている本人たちの恐怖は計り知れない。


途端に連中は青い顔をして逃げ出して、いつのまにかそこには私たちしかいなかった。


あんなに威張りくさっていた金髪男までも居なくなっていた。


急に訪れた平穏にホッとして思わず座り込んでしまった。


覚悟をしてここまでやってきたのに、予想もしてなかった結果に驚きすぎて未だに私の心は激しく鼓動している。


「大丈夫か?」


陸玖との手は繋がれたままで、一緒に座り込んでくれてまた私の体を抱き寄せてくれた。


いつまでこうしてくれるんだろう。


その久しぶりの優しさに嬉しくて思わずその肩に手を置いてしまった。