俺は一番最悪な形であいつを傷つけた。


雨に打たれる彼女に手は差し伸べなかった。


そして、あいつも言った。


あっけらかんと俺の魂胆など全て見透かしているように鼻で笑った。


俺はその言葉に激怒し、その真っ白な頬を強く打った。


でも俺は由姫の想いなんて全部知ってた。


あいつは俺を苦しませないためにあえて確かな悪人役になりきってくれたんだ。


全部あいつの優しい嘘だってことくらいわかってた。


このどうしようもない俺の復讐をあいつは自ら手伝ってくれたんだ。




認めよう、俺はあいつのことが確かに好きだった。


その理由を明確に言えずとも、俺の心は全身全霊であいつのことを呼んでいた。



でも許されない。


俺たちはもう知っている。


世間の目の恐ろしさを。


いつも誰かに見られている、そんな感覚を。


普通を外れようとすれば、集中攻撃を浴びせられ、生きる意味さえ見失ってしまう、そんな恐怖を。


それは俺たちにしかわからない。


その確率なんて知りたくもないが、そこに立ってしまった俺たちにしかわからないのだ。


だから、決めた。


この想いに蓋をすることを。


お互いを傷つけないために気持ちを消し去ってしまうことを。


全てなかったことにして、あいつを恨み続ければいい。


そしたら何もかも上手く行くから。


みんなが満足してくれる。


みんな文句を言ったりしない。