(完)嘘で溢れた恋に涙する

2人の通夜の日の朝、犯人が捕まった。


朝からどこのニュースも速報として事件を大々的に報道していた。


犯人が有名人だったからだ。


大企業の社長で、メディアにも多く出演し、敏腕イケメン社長として広く知られていたらしい。


そんな男が、夜の道路で親子を轢き殺し、約3日間逃亡を続けていた。


その上、奴は運転時アルコールを大量に摂取していて、あろうことか部下に罪をなすりつけようとしていたのだ。


男の許されない行為に世間の注目は集まり、通夜と葬式には記者が大勢集まった。



正直、初めにその真実を知ったとき、俺は何も言えなかった。


言葉が浮かばなかったのだ。


悔しすぎて、悲しすぎて、その渦巻く感情を外に出すことができなかった。


だけど、2人が火葬場に連れていかれその身を炎に委ねたとき、一言「ふざけるな」と口にした途端、次から次へとあいつを責める言葉が出てきた。


「殺してやる、殺してやる!!あの男を今すぐ殺す!!ああああああ」


そうやって正気をなくして取り乱す俺を、涙を流しながら見つめていた参列者の人たちをよく覚えている。


あの頃俺は精神を病みかけていたと思う。


食事もろくに口にせず、四六時中そばにいてくれた祖父母たちの言葉にも一切反応せず、毎日を死んだように生きていた。


小さくなってしまった2人の前で俺もそっちに行ければいいのにと願っていた。


ニュースで流れる奴の顔を頭の中で何度も包丁で突き刺していた。


それ以外何も考えられなかった。


これ以上生きていても意味がないと感じていた。