(完)嘘で溢れた恋に涙する

医者が海央の死を告げるその声が無機質すぎて、それが事実なんて到底信じられなかった。


医者に掴みかかって怒鳴った。


「おい!海央はまだ死んでない!ちゃんと見ろよ!まだ温かいだろ!死んでない!死ぬはずがない!海央が死ぬはずない…」


その医者も海央を助けられなかったことを悔いていたはずだ。


唇を噛み締め、拳を握りしめ、一回り小さい俺になされるがままになっていた。


だけど俺はそんなことには気づけず、ただひたすらにその医者を責め続けた。


大粒の涙を零しながら、その部屋に響き渡るほどの叫び声をあげた。


しかし俺は徐々に冷たくなっていく海央を見て、だんだんと海央が死んでしまったということを無意識に受け入れ始めていた。


夢であればいいのに、と何度願っただろう。


だけどその最悪な夢が覚めることはなかった。


ひとしきり大泣きした後で、ずっと近くでその様子を呆然と見ていた優也のお父さんが近づいてきて俺の前で膝を曲げて俺と同じ視線になった。


俺の頭をゆっくりと撫でて、力強く抱きしめてくれた。


繋がれたままの海央の手の冷たさと、俺を抱きしめる手の温かさが酷く正反対で余計辛くなり、俺はまた絶叫するように泣いた。


しかし、しばらくしてあることに気づく。


母さんはどこだ。


俺はその時までここに母さんがいないということは別のところにいるんだろうと思っていて、俺が真っ先にここに連れていかれたということは母さんは無事なんだろうと勝手に思い込んでいた。


でもきっと一人ぼっちで辛いはず、そう思った俺は声を震わせながら誰にというわけでもなく尋ねた。



「母さんは?」