10分ほど待つと、優也のお父さんが俺たちの前まで車でやってきて後部座席のドアを開いて乗り込むように言ってくれた。


「おう、待たせたな」


俺たちが乗り込むと、健康的でがたいのいい優也のお父さんがニカっと笑いながらそう言った。


「今日はお世話になります。お願いします」


俺はかしこまった口調でそう言って頭を下げると、優也のお父さんは振り向いて俺の頭をゴシゴシと撫でてくれた。


「お前、そんなこと言うようになったのかー。偉いなあ」


俺はこのいつも明るくて面倒見のいい優也のお父さんが大好きだった。


優也のお父さんだけでなく、お母さんのことも大好きだった。


この家族は俺たち家族を十分すぎるくらい何度も支えてくれた。


元々、アパートが隣の部屋だったことで仲良くなったらしいが、優也の家が近所に一軒家を建ててからもその付き合いはずっと続いた。


特に俺の父さんが死んだ時は、ずっと泣いていた母さんを優也のお母さんが繰り返し励ましてくれ、俺も優也に元気付けられた。


その時はまだ幼すぎて父さんの死がよくわからず、1人だけいつもと変わらず楽しそうにしていた海央のことをあやしてくれたのも優也のお父さんだった。


なかなか立ち直れなかった俺たち家族をずっと俺のじいちゃんばあちゃんたちと一緒に支えてくれた。


そのおかげで今の俺たちがある。


母さんも日頃いつも俺と海央に言い聞かせていた。


優也くんの家にはいつか恩返しをしようねって。


出来ずじまいだったけど。