(完)嘘で溢れた恋に涙する

「おーい、由姫。ごめん、待たせちゃって」


「ひっ」


後ろから聞こえた透の声に思わず小さな悲鳴をあげてしまった。


幸い透には聞こえていなかったみたいで、気にすることなく私の所に戻ってきたけど、近くに来られたらこの動揺を隠すことはできない。


案の定、透は不思議そうな顔をしながら尋ねてきた。


「なんか顔青いよ。大丈夫?」


「う、うん。ちょっと寒くて」


声をうわずらせながらも何とかそう答えると、透は納得したように頷いた。


確かに外は雨のせいですごく肌寒かったから。


「じゃあ、急いで戻ろうぜ」


透はそう言って私の手を握って引っ張った。


透の動きに身を任せながら、自分に必死に言い聞かせる。


落ち着け私。


あれは確かに陸玖だった。


背はだいぶ伸びていたけど、顔は変わっていなかった。


だけど、この広い会場の中で見つかるはずがない。


万が一見つかったところで、きっと何にもない。


空気のようにスルーされる。


繰り返し、繰り返しそう言い聞かせて、いつのまにかさっき試合を見ていた場所に戻ってきていた。


膝に置いた手は変わらず震えていて、落ち着かせようと必死に手を擦り合わせていた。



そうして、やっと落ち着いてきて、透に促されて昼食にと買っていたコンビニの袋を開いた時だった。



「幸せそうだな」



聞き馴染みのある少し掠れのあるその声が聞こえて振り向くと、観客席の一番上の段に立って、あの日と何も変わらない冷たい目で私を見下ろす陸玖がいて、吐き捨てるように私にそう言い放った。