(完)嘘で溢れた恋に涙する

「差し入れ渡すなら今じゃない?」


透にそう言われて、慌てて2人で1階に降りていった。


アリーナの外の玄関のところにはたくさんの選手がいて、美結を見つけるのは至難の技だった。


だけど、


「由姫ーーー!!」


遠くから名前を呼ばれたと思ったら、後ろから勢いよく抱きつかれ、振り向くと少し額に汗をかいた美結がいた。


「お疲れ!美結ほんとにすごかったよ。私たちの前にいたおじさんもね、すごい美結のこと褒めてて、誇らしかったよ」


抱きつき返して、興奮しながら試合の感想を喋ると美結は嬉しそうに頷いてくれた。


「おーい、俺もいるんですけど」


そんな私たちをしばらく横から見ていた透が、耐えきれなくなったのか声をあげた。


「ああ、あんたもやっぱ来たんだ」


「言い方ひどいよー?ちゃんと美結ちゃんに言われたように由姫のナイトしてきたからね」


「当たり前やろ。そのためだけに許したんやけん」


「へえ〜、そんなこと言っちゃうんだ。俺たち美結ちゃんに差し入れ買ってきたのに」


いつものように冷たい美結に、にやにやしながら透がそう言うと、透が怪訝そうに眉を曲げた。


そんな美結に透が後ろに持っていた差し入れの入った紙袋を差し出した。


「はい、これ俺と由姫から」


美結は突き出されたそれと私たち2人を凝視しながら状況が掴めないといった様子で目を見開いていたが、すぐに大声で叫んでそれをひったくるようにとって中を見た。


「ええええ!めっちゃ嬉しいっちゃけど!!2人で選んでくれたと?」


一応2人で、とは言いつつも私だけを見ながらそう聞く美結にうんと頷いた。


「こんなん始めてだ〜。嬉しい、ありがとね!!」


本当に嬉しそうな表情で何度も中身を見て、少ししてから透の方を見てもう一度ぶっきらぼうに言った。


「あんたも、ありがとね」


透は満足したように笑って、私の方を見た。


「あの、美結、もう一個あってね、いつもお世話になっているお礼なんだけど」


喜ぶ美結に、そう切り出して今度は私の手からラッピングされた袋を差し出した。