(完)嘘で溢れた恋に涙する

黙っていてもどうにもならない。


全て私が巻いた種だ。


聖奈ちゃんの面白がる気持ちも
クラスメイトの私への不信感も
美結が私にかける言葉を見つけられないのも


全部理解できる。


これまでだってこんな状況に何度も立たされてきた。


もう切り抜け方ならわかってる。



ごめん、それが事実なんだ。


それさえ言えば、もう誰も近づいてこない。


多少は嫌がらせを受けるかもしれないけど、そんなのお手の物だ。


自分のせいだと思えば何も怖くない。



一人になるのだって平気だ。


なのに、理玖の存在が私がその行動に移るのを引き止めていた。




「理玖くんって家族交通事故で亡くしてたんだね」




同情に満ちた顔で聖奈ちゃんが理玖に近づいてそう問いかけた。




返事をしない理玖に聖奈ちゃんは続ける。




「お母さんと妹を同時に亡くして、この島のおばあちゃんのところに来たって知って、うち信じられんくって。
理玖くんいつも笑顔やったから。
でもさ、うち許しきらん。
理玖くんの家族を奪った犯人とその家族のあいつを」




そこまで言ったところで、聖奈ちゃんは私を見て勝ち誇ったような笑みを浮かべた。



「あんたよく理玖くんの彼女になろうとか思えたね。あんた知ったったとやろ」




パクパクと口を動かすことはできても、声が出ない。



また声が出なくなったのかと動揺したけど、吐息のような声が漏れた。




「ぁ…」




「なんか言いなよっ」



聖奈ちゃんがそばにあった紙を私に投げつけて、クリップで留められていたそれが一気に地面に広がる。




ネットのニュースや、掲示板をコピーしてきたんだろう。



見覚えのあるものがいくつかある。



事実に溢れた紙たちに嘘にまみれた自分が囲まれている。


その時初めて、自分がとんでもないことをしてしまったとやっと気づいたんだ。


聖奈ちゃんの言う通りだ。



私が陸玖に近づくことは禁忌だったんだ。