「違わないけど……」
思わず目を泳がせた。
付き合えるかどうか、とは言われた。
だけど、ちゃんとした言葉が欲しいなんて図々しいことを思ってしまった。
でも、そんなこと言える訳がない。
「あー、そっか。好きとは言ったけど付き合おうとは言ってなかったな」
金沢くんは私の思いを察してくれたのか、自分の言動を思い出し、繋いでいた手を離すとガシガシと頭をかき小さく咳払いした。
「改めて言うよ。俺と付き合ってくれませんか?」
誠実な金沢くんらしく、やっぱり好きだなという気持ちが溢れて胸があたたかくなってくる。
「はい」
照れくさくて小さな声で答えればイタズラな視線を向けてきた。
これはよからぬことを考えているような気がする。
なにを言われるんだろうと身構えた。
「付き合っているんだからさくらも俺のことも名前で呼んでよ」
「えっ?」
「俺の名前、知らないってことはないよな?」
「知ってるけど……」
さっきまで名字で呼んでいたのにいきなり名前で呼ぶのは厳しいかも。
「じゃあ、呼んで」
声を弾ませ、期待を込めた目で私を見てくる。
これは言うまで逃げれないパターンだ。
もう高校の時とは違う。
よし、言うぞ!という思いで金沢くんを見上げた。
「れ、蓮……くん」
意気込んでみたものの、さすがに呼び捨てにはできなくて“くん”付けで呼んでみた。



