そして、恋の種が花開く。


思わず周りを見回すと石のベンチに座っている私と同年代ぐらいのカップルと目が合った。
向こうも気まずそうに視線を逸らし、私も再び俯いた。

「赤木、顔真っ赤」

笑いながら指摘され、顔だけじゃなく耳まで赤くなる。

「あ、当たり前でしょ!金沢くんが私をからかうから」

今度は小声で抗議する。
さっき抱きしめられた時、金沢くんも緊張しているのかな、とか思っていたのに……。
あの手の震えは私の勘違いだったのかもしれない。

それにしても金沢くんには高校時代からやられっぱなしだ。
毎回、私ばかり動揺して悔しすぎるから、いつかギャフンと言わせたい。

「ごめんごめん。あまりにも赤木が可愛くて」

「そんな言葉じゃ騙されません」

フイとそっぽを向き、金沢くんをおいて中庭を出ようと歩き出すと背後から腕を掴まれた。

「さくら、おいていくなよ」

えっ?
私の腕を掴んでいた金沢くんの手がスルリと降りてきて、手を繋がれた。
前に一度だけ金沢くんに手を掴まれたことはあるけど、その時とは全然状況が違う。

それに今までに聞いたことのないような甘い声で“さくら”と呼ばれ胸がどきりと音を立てる。
さっきまで“赤木”だったのに。

「なんで、名前……」

「えっ、だって俺たちは付き合うことになったんだろ」

「付き合う?」

「違うのか?」

金沢くんが怪訝そうな表情で私を見る。