そして、恋の種が花開く。


「多分、俺らが最後だと思うぞ。さっさと帰ろうぜ」

金沢くんに促され、廊下を歩き下駄箱に向かいながら他愛もない話をする。

「毎度のことだけど、校長の話マジ長くなかった?俺、寝そうになったわ」

「確かにね。今日はいつにも増して長かった気がする」

「だろ?卒業式だからって気合い入りすぎなんだよ。せっかくの感動も睡魔でぶっ飛んだわ」

ふと会話をしていて気になることがあった。

それは私が泣いていた理由を金沢くんは聞いてこないことだ。
まぁ、女子に『なんで泣いてたの?』なんてデリカシーのないことをズバッと聞いてくる人はあまりいないと思うけど。

私が泣いていたことには一切触れず、面白い話をして笑わせてくれるのは金沢くんなりの気遣いなのかな、とか思ったりして。

でも、なんで金沢くんはあの時間に一人で廊下を歩いていたんだろう。
人気者の金沢くんなら、みんなと一緒に帰ってると思ったんだけど。

「ねぇ、どうして金沢くんは帰りが遅かったの?」

「俺?顧問の先生に挨拶してたから帰るのが遅くなったんだ」

「そういえばサッカー部の部長をしてたんだよね」

「あぁ。弱小だったけどチームワークは抜群だったぜ。部活、楽しかったな~」

後輩からもらったであろう、寄せ書き色紙を嬉しそうに眺めながら言う。

下駄箱に着くと靴を履き替え、もう履くことはない上履きを袋にしまった。