そして、恋の種が花開く。


そして「知美のヤツ……」と舌打ちをしながら小声で言った。
それを聞いて、笠原さんの言った事は事実だったんだと確信した。

「やっぱりホントなんだ」

胸がズキズキと痛み、唇を噛みしめる。

「いや、知美とは一回ヤっただけで」

「やめて!そんなの聞きたくない。それに一回でも裏切りだよ……」

自然と涙がこみ上げてくる。
どうしてこんな思いをしないといけないんだろう。

「ごめん。でも、好きなのはさくらだから」

佐々木くんが私のそばに近寄ってきた。

「来ないで!」

私の強い口調に佐々木くんはピタリと足を止めた。

「もう、佐々木くんと付き合うことは出来ないよ……」

佐々木くんが私以外の人に触れたのが悲しかった。私にも非があるのかも知れないけど、やっぱり許せなくて。
手で目尻の涙を拭う。

「それって別れるってこと?」

「……うん。今までありがとう。さよなら」

「さくらっ」

私は佐々木くんが呼び止めるのを無視し、逃げるようにその場を後にした。

走ってたどり着いたのは二階の渡り廊下。
そこの窓から校門が見える。
卒業生が続々と帰っていて、楽しそうにカップルが手を繋いでいたり、友達同士笑い合っている姿が視界に入る。

ホントだったら佐々木くんと笑顔で帰ってたはずなのに……。
私はズルズルとしゃがみ込み両腕で顔を隠すように覆った。