どれくらい時間が経っただろう。
時間的には二、三分ぐらいだけど、体感的には三十分は経ったような気がする。
ずっとここにいても仕方ない。
重たい足取りで歩いていたら、廊下で友達と話していた佐々木くんを見つけた。
一緒にいるのは同じサッカー部の榎並くんだ。
いつもなら笑顔で話しかけていたと思う。
だけど、今日は全然笑えない。
私に気づいた榎並くんが佐々木くんの肩をポンと叩く。
「お、彼女が来たから俺は帰るわ。じゃ、今日の夕方に誠人ん家に行くから」
「了解」
榎本くんと別れた佐々木くんは笑顔で私の名前を呼んだ。
「さくら、帰ろうぜ」
どうして笑って私を呼ぶの?
裏では私の愚痴を笠原さんに言ってたんじゃないの?
苛立ち混じりの気持ちが広がり、私の口は勝手に動いていた。
「ねぇ、佐々木くんと笠原さんてどういう関係?」
「急になんだよ。どういう関係って知美は幼なじみだけど。それはさくらも知ってるだろ」
佐々木くんが笠原さんの名前を呼び、胸がチリッと痛む。
「知ってるよ。その幼なじみと身体の関係を持ってるって聞いたんだけど、ホントなの?」
真実を聞くのは怖かった。
だけど、このままなにも知らなかった時のようには出来ない。
私の本音は『そんなことある訳ねぇよ』って笑って否定して欲しかった。
だけど佐々木くんは明らかに険しい表情になった。



