そして、恋の種が花開く。


まずD組の教室に行き、ドアに手をかけようとしたら急に開いたので反射的に手を引いた。
もしかして佐々木くんかな?なんて期待していたんだけど。

教室から出てきたのは笠原知美。
高校生にしては大人っぽい顔で、私と同級生なのに年上に見える。
派手系の人が集まるグループのリーダー的存在で、私とはちょっと系統が違うので苦手意識がある。

笠原さんとは挨拶する程度だったのでいざ話しかけるとなると身構えてしまう。

「あの、佐々木くん知らない?」

「あー、誠人ならさっきまでいたけど勇二と出て行ったよ。まだその辺にいるんじゃない?」

笠原さんは佐々木くんの幼なじみだから名前で呼んでいる。
付き合っている私は、佐々木くんの下の名前を呼んだことがないので少し羨ましいなと思っていたりして。
だけど、実際に佐々木くんを目の前にしたらドキドキして“誠人”なんて呼べないんだけど。

「そうなんだ。教えてくれてありがとう」

「あっ、ちょっと待って」

お礼を言って探しに行こうと背中を向けると笠原さんに呼び止められ、振り返った。

「ねぇ、一年も付き合ってるのに誠人とエッチしてないらしいけど、赤木さんてホントに誠人のことが好きなの?」

突然、無遠慮に投げ掛けられた言葉に目を見開いた。
笠原さんはそんな私を見て意味深に笑う。