ふと思い出すのは高校の卒業式。
その日は天気もよく暖かくて絶好の卒業式日和だった。
滞りなく式を終えるとクラスの友達と記念撮影をし、最後の制服姿をカメラやスマホに残していた。
そこには涙はなく、みんなテンション高く弾ける笑顔が溢れていた。
うちの高校は、女子の卒業生の制服のリボンを後輩に渡すのが伝統になっている。
でも、これには嫌な点もある。
後輩は部活とか委員会などでお世話になった先輩にリボンをもらいに行く。
だから、部活などに入っていない人はもらえないし渡せない。
部活に入っていたとしても、後輩がもらいに来てくれない場合もある。
そういう時は、こっそりリボンを外して後輩に渡した風を装うという話を耳にしていた。
私は幸いにも部活に入っていて後輩が花束を持ってきてくれた時に「リボンを下さい」と言われたので渡したけど。
友達や後輩と写真を撮りまくり満足した私は、一緒に帰る約束をしていた佐々木くんを探すために校内を歩いていた。
佐々木くんとはまだ一枚も写真を撮っていなかったから最後に撮れたらいいなという希望を抱いて。
三階の三年の教室。
私はA組、佐々木くんはD組で部活がない時は先にホームルームが終わった方が相手のクラスに迎えに行っていた。
それも今日で最後なんだ。
少し、しんみりとした気持ちで階段をのぼった。



