そして、恋の種が花開く。


「でも、俺は」

「やめて!佐々木くんと私は卒業式の日に別れた。それだけだよ」

言い訳とか聞きたくなかったので佐々木くんの言葉を遮った。

「ホントにごめん。さくらを傷付けてしまったことだけは謝らせて欲しい」

佐々木くんは頭を下げて謝罪した。

「だからもういいって言ってるでしょ。次に会った時、私の事は無視してくれていいから。それじゃ」

苛立った感情のままバッグを手に持つと席を立ち、人で賑わっていた宴会場を出る。
同窓会、楽しい気分のまま帰りたかったのに!

「あれ、さくらどうしたの?」

トイレから戻ってきた佳代と廊下でバッタリ会った。

「用事を思い出したから先に帰るね」

ホントのことは言えなくて、とっさに誤魔化す。

「えー、そうなの?二次会に行こうかって話があるのに」

「そうなんだね。ごめん」

「いいよ、いいよ。また、みんなで集まる時に誘うから」

「ありがとね。じゃ、お先に」

佳代と別れ、エレベーターに乗る。
デザートを食べ損ね、思わず舌打ちする。
しかも元カレに過去の話を蒸し返されるとか最悪だ。
円満に別れていたらこんなことにはならなかったのに……。

そのまま帰ろうかと思ったけど、モヤモヤした気持ちをいったん落ち着かせるため、エレベーターを降り一階のロビーに向かう。
空いていたソファに座り、静かに目を閉じた。