幼馴染の彼~あの日の約束~

「怜美!」

 誰かに呼ばれながら、体を揺さぶられて目が覚める。

「あ、智弥」

 目の前には心配そうな表情をした、智弥がいた。
 あれ、ここにいるってことは、さっきのは夢?

「大丈夫か?家に帰ったらいないから心配したんだぞ。携帯にかけても出ないし」

「あぁ、ごめん。音消したままだったみたい」

 床にあった携帯を持ち上げると、智弥からの着信履歴が何件も入っていた。

 ぎゅっと抱きしめられた。

「良かった。もしかしたらと思ってここにきたら明かりが付いてたから。本当に良かった」

「・・・ごめん」

 その時、微かに智弥のつけている柑橘系のフレグランスとは違う香りがしたような気がした。

 思わず、ビクッと肩を震わせ、智弥を軽く押しのけると、智弥は少しだけ眉間に皺を寄せた。

「怜美?」

「ごめん・・・うたた寝してたせいか、少し寒気が・・・」

「それはまずいな。風邪でもひいたか、早く帰ってあったまろう?」

 優しい眼差しで私の顔を覗き込んでくる。いつもと変わらない智弥。

 でも、今はその優しさがなんとなく怖かった。