「きゃあ!」
「わ!こっちくるな!!」
「先生!隠れてないでどーにかしてよ
 ー!」

黒いふさふさの蝶が教室内を低空飛行している。

わ、どうしよ!こっちきた!
ぇ、ぇ、教科書でぶつ?!いや、でも死んじゃうかも…!よ…よけようっ




『ピトッ』



ガタガタガタガタ……!!

みんなが私から離れてゆく音が聞こえる。

汚いもの扱いされた感じで、やたらと傷ついた。このあともみんなから、そういう扱いをされるのだろうか。


だって、こともあろうにそれは、私の胸元についたのだ。
そんな目の合うとこにとまらなくても…!
せめて背中にしてくれたら…
私はショックのあまり動くことができず、
目がにじむのを感じる。
だめ!泣くなわたし!


そのとき、あったかい手が肩に触れ、その優しい手でふわっと蝶が包み込まれた。

そしてその張本人は私に言った。

「カラスアゲハは、さつきの花の蜜が大好物なんだ。こわがらないであげてよ、こんなにかっこよくて綺麗なんだから。」

彼は、ニカッと笑った。




わたしは、胸がきゅっと締まるのを感じた。