長い廊下をしばらく歩き、立派な扉の前で足を止める。
「………。」
ドアノブに手をかけ、小さく深呼吸する。
ガチャッ…
「おはようございます…」
天輝が入ったのは、家の中でも一番大きく立派なダイニング。
中心には総勢12名座ることのできる、細長いテーブルとイスが設置され、まわりには豪華な装飾品があしらわれている。
そこにはすでに二人の人が朝食を食べていた。
「おはようございます、天輝さん」
「…………。」
一番端の主賓席に座り、天輝と顔すら合わせずに挨拶だけを済ませたのは秀明の現妻、麗華(れいか)。
その隣に座っている天輝の弟、秀信(ひでのぶ)は、天輝と顔を合わせるどころか挨拶すらしない。
しかし、この光景は天輝にとってはいつものことだ。
母親が亡くなってから一年後。
父親の秀明は、3歳年下のとある名家のご令嬢と再婚した。


