「お母さん…」
いつの間にか、天輝の頬には一筋の雫が流れている。
その瞳は、虚。
美しい街並みすら、写していなかった。
「お母さん、ごめんね……」
ただ、その表情は誰もが見惚れるほど美しかった。
「…じゃあね」
その無表情が一瞬だけ、優しく笑う。
天輝はその町の風景に背を向け、丘を後にしようとした。
そのとき、
ヒューーーッ…カサッ
「……?」
白い何かが、天輝のすぐ横を飛んできた。
反射的にその物体を目で追うと、それは天輝の5メートルほど先に静かに着地した。
(何だろう…?)
何となく気になって、その白い物に近づいた。
その正体は、紙飛行機。