【4月23日 月曜日】
夕焼け色に美しく染まる、小さな町。
そんな風景を、倉内天輝(くらない あき)は丘の上から見下ろしていた。
「お母さん…」
この町は、天輝が幼少期に育った場所だ。
空気の綺麗な空に浮かぶ、フワフワの雲。
小道を歩くとほのかに香る、お惣菜の匂い。
近くの土手で遊ぶ子供達の楽しそうな声。
山の方にあるお寺の鐘の音。
五感で感じる全てのものが、懐かしい記憶を呼び起こす。
もう帰れない、あの頃の記憶を。
『天輝』
目を閉じれば聞こえてくる。
あの頃の…あの幸せだった頃の、母親の声。
目を閉じれば感じる。
爽やかな春の風が、まるで母親に撫でられているかのように。
天輝が10歳の時に、亡くなった母親が。