桜が散り、葉桜へと変わりゆく4月下旬。
スーツに身を包んだ女性が片手に花を持ち、とある墓地を訪れる。
「…久しぶり」
女性の目の前には一基のお墓が建っている。
「今日で10年かあ…。月日が経つのって早いね」
返事はもちろん返ってこない。
「あっ、そうそう。あの時の約束、また一つ叶ったよ。辛いこともあるけど、ちゃんとやってるんだ」
ふと、遠くの方で話し声が聞こえた。
その方向へ目を向けると夫婦なのか、30代くらいの男女が手を繋ぎ歩いていた。
どちらかの親族の御墓参りなのか。
懐かしいような、悲しいような感情が込み上げてくる。