「杏南と随分、仲良くなったね」







夜、風呂上がりにベッドに座ると
黒猫が窓からするりと入ってきた。





俺が高校にいる間も
どこかからジッと俺をみてる陰険な奴。



杏南、とか名前までチェック済みか。







「覗き見してんなよ、悪趣味クソ霊」





オレはペットボトルの水を飲みながら
桃汰からのLINEに返信したりして

勉強机に座る。





「勉強するの?感心だね」

「うっせ。明日から期末なんだよ」

「ほほう」




今回ばかりは
本気で赤点取るわけにはいかねぇ。



杏南の魔法のような力を失いたくない。



あの力がなくても‥‥
杏南は思ってたより面白くて良い奴だった。



もっと陰気臭いつまんねー奴かと思ってたのに
最近アイツといる時間が楽しい。









黒猫キョーゴは机の上にヒョイと飛び乗ると
隅からジーッと俺の勉強姿を見つめる。




教科書を開いた俺は
問題とにらめっこする。


杏南と勉強したときには分かったのに
公式がさっぱり分からない。





「おいクソ霊、お前に見られてると気が散る」

「分からないの?」

「お前のせいで集中できねーんだよ」




イラつく俺に、
黒猫キョーゴは問題を覗き込む。



「簡単な公式だよ」

「はあ?」

「だから今ここで使うのはこの公式だよ」




前足の肉球で
教科書の公式をトントンとする。



「・・・・」


俺は半信半疑で言われた通りの公式を当てはめて計算してみる。



「どう解けたでしょ?」




なんかすげー悔しいし。

そういやコイツも元は同じ高校生だったか。