「‥‥ん」



逢坂くんの目がゆっくり開き
私の分厚いメガネと目が合う。





「あ‥‥わりぃ来てたんだ」

「おお、はようございますす」

「なにその噛み方(笑)」






逢坂くんは、ふと笑う。


まだ少しトロンとしてる寝起きの逢坂くんの可愛さに、胸の奥が小さくキュンとなる。



な、なんだこれ?





「んー‥‥」



逢坂くんはそのままの突っ伏した姿勢で
けだるそうに手だけを私に伸ばす。




「杏南、手ちょーだい」

「手?こ、こうですか?」

「そ」



逢坂くんは私が差し出した手を
きゅっと握るとまた目を閉じる。




私、また男の子と触れてしまってる‥‥。






「あー‥‥生き返るー」

「きょ、今日も苦しかったんですか?」

「んーまーぼちぼち」






しばらくそのまま手をつないだ後
逢坂くんは立ち上がると、うーんと伸びをした。




「はー元気でた。今日はどこ行く?」

「え?!だダメですよ!今日こそ勉強です!」

「えー勉強だりぃ」

「だだダメですっ!」



私は持ってきた問題集をカバンから出すと
逢坂くんの前に並べる。




「もうすぐ期末なので頑張りましょう」

「俺別に退学なっても良いし」

「ダメですっ」





逢坂くんが良くても
学年主任の人生がかかっている。


それに私も‥‥

逢坂くんには同じ高校にいて欲しいって思った。





ブーブーやる気のない逢坂くんに
私は心を鬼にする。





「次赤点だったら‥‥
もう一生、お触り禁止です!!」