「わりぃ、1分だけ」






え?‥‥1分?



逢坂くんは突然それだけ言うと
私の肩を引き寄せ、そっと抱きしめた。










抱きしめ・・・え?


え、え、うえぇえーーー?!











「あ~、ヤバい‥すごいお前」





逢坂くんはホッとしたような声を出すと
さらに私のことをギュッと抱きしめる。





一方、私はパニックで
ガチガチに体が固まって・・・。















10分程、そのまま抱きしめられたのか。

いや、実際には
1分だったのかもしれないけれど…







逢坂くんは、ゆっくり私を解放すると
足元に置かれていたカバンを肩にかけた。



私を見つめる彼の顔は
なぜかさっきよりも清々しい。



「お前、何者か知らねーけど‥‥助かった。
サンキュ」




逢坂くんは少し気恥ずかしそうにそう言うと
そのまま帰って行っていった。



逢坂くんの後を、黒猫もスタスタついて行く。






私だけがただ呆然と、
しばらくそこから動けずにいた。