なんかもう、逃げ出したい‥‥
だけどここで逃げたら
また前と同じ自分ってことになるのかな。
「あ‥‥ありがとうございます‥‥」
スカートをキュッと握り、顔をひきつらせながらも男子達に笑顔を向ける。
「お前、白雪さんビビってるじゃん(笑)」
「ごめんねー?お詫びにこれから、どっかみんなでサボろうよ(笑)」
「いえ、あの、私は結構です」
「ほらほら~」
男子達はふざけて私の手をつかむと
本当に引っ張ろうとする。
なんだか浦島太郎の亀になった気分。
やめてくださいとお願いしているのに
囲われていじられて、SOSの声が届かない‥‥
その時、グイッと反対の腕を
うしろに引っ張られる。
「わ!」
慌てて後ろを振り向くと
そこにはいつの間にか逢坂くんがいる。
「お、逢坂くん!」
なぜだか逢坂くんを見てホッとする。
ひとりぼっちで押し潰されそうだった心が、ふっと緩んでく。
一方、逢坂くんの表情はなぜだか冴えない。
「何してんの?」
「え?」
「すげー気分悪い」
そう言い捨てる逢坂くんの表情は
ぶっきらぼうで少し怖い。
気分悪いって‥‥また霊的な??
「だ、大丈夫ですか?」
「・・・・・」
逢坂くんは私を無視して、周りの男子達を睨みつける。
逢坂くんが現れて
体育館前が騒がしくなる。
頬を赤く染めてキャーキャー騒ぐ生徒や、私と逢坂くんを交互に見ながらヒソヒソ話す生徒。
私を冷やかしていたヤンチャ系男子生徒は、逢坂くんに睨まれいつの間にかいなくなっていた。
逢坂くんは私の腕を掴んだまま
体育館とは反対方向へ歩き出す。
