「あ、ごめん杏南。この話はつまらない?」


「!」







ふいにそう聞かれて
私は自分が下を向いて歩いていた事に気付く。


 

「あ‥‥大丈夫だよ」

「そう?」

「うん」




そして、また気まずい沈黙。

どうしよう‥‥

せっかく盛り上がっていた二人の会話を私が途切れさせてしまった上に、面白いことのひとつも言えない。


何か、話題‥‥話題‥‥







そんな中、今度は志帆さんが話題を切り出してくれる。



「えっと実は私たちずっと杏南のこと気にしてて」




え?

私が驚くと、志帆さんが遠慮がちに続ける。



「うちらも結構、地味系だけど、杏南ばっかり標的にされてたでしょ?本当は助けたいなって思ってて」


「うん。だけどやっぱ勇気なくてね」

「ね」



志帆さんとあかりさんは
お互いに目を見合わす。





「だけど今朝頑張ってた杏南を見て、うちらも勇気だして声かけてみようって話になって」


「そうそう。すごい見た目変わってるから、逆になんか緊張したけど(笑)」


「ね、本当すごい変わったよね」






私に気を使いながらも、精一杯、二人が笑顔で盛り上げてくれるのが分かる。



そうだったんだ。

私の知らないところで、こんな風に心配してくれていた人たちがいたんだ。






「ありがとうございます」



私がぺこりと返事をすると
二人は安心したようにニッコリする。






「まぁうちらもどっちかと言うと話下手だから‥‥なかなかすぐに打ち解けるのは難しいかもだけど。うちらで良ければいつでも声かけてね」


「そうそう。一緒にいてつまらないかもしれないけど‥‥良かったらまた話そうね」




つまらなくなんてないよ‥‥と言おうとしたところで体育館についてしまう。



「あ、じゃあ杏南、またね」



二人は小さく私に手を振りながら、体育館の中のクラス列の自分たちの位置へ移動して行った。