その時

キーンコーンカーンコーン





チャイムがなり
みんな自分の席に戻っていく。



‥‥予鈴に助けられた。

私はホッとして肩を撫で下ろす。




勇気を出し発言してみたものの
あれ以上うまく言える自信はなかった。



机の下でスカートを掴んでいる両手を見ると
小刻みに震えている。



その震えを止めようと
ゆっくりゆっくり深呼吸する。




全部は言えなかった。



だけど、言えた。

言えたんだ。




「次からはもう少し頑張ってみよう」



小さな声で自分に言い聞かせるように
そっと呟く。





そんな小さな進歩でも
自分に負けずに繰り返していけば


きっといつか人並みに話せるようになれるかな。




いつの間にか震えが止まった両手には
まださっきの逢坂くんの手の感触が残ってる。



うつむいて殻に逃げこんでいた私が
こんな風に前向きに頑張ろうって思えるのは



他の誰でもない、逢坂くんのおかげだよ。