「少し休憩しようか」
私の緊張に気づいているのかいないのか。
淡い桃色のTシャツを着た二ノ宮は、シャーペンをノートの上置いて提案した。
「そうだね。何か飲──」
「よっと」
飲もうか、という私の声は、二ノ宮の動きによって封じられてしまう。
なんと、私は驚く間もないままに、彼の腕の中に閉じ込めらて。
「な、なんで寝転がるの……」
2人一緒に絨毯の上に転がった。
突然過ぎて現実を受け止められず、心臓がドキドキとうるさい。
「だから休憩」
クスクスと笑い、体を揺らす二ノ宮の服から、いい香りがする。
触れてるところが、熱くて。
否応なしに胸が高鳴って。
恥ずかしいけど、離れたくないと思いながら、彼の背中に腕をまわす。
そうすれば、私を抱き締める二ノ宮の腕に少しだけ力がこめられて、額にそっと唇が触れた直後。
──ピンポンと、玄関の呼び鈴が甘くなりかけた空気を壊した。
長めの溜め息が降って、二ノ宮は仕方なさそうに起き上がる。
つられて私も体を起こすと、彼から少し待つように言われ、どこかくすぐったい気持ちで部屋を出て行く彼の背中を見送った。