「具合悪い?」

「えっと、大丈夫……」


ナチュラルな木目の床の上、茶色いラグの上に敷いたクッションに座りモジモジと答える私。

恥ずかしくて言えるわけがない。

お泊まりで、誰もいないという状況に集中できないなんて!


インターハイ開会式の帰り。

泊まりに来ないかと私を誘った二ノ宮は。


『夏休みの宿題合宿しよう』


その目的をにこやかに口にした。

お盆休みに入ると、二ノ宮の家族は里帰りするのだけど、どうやら高校に入ってからは年末年始の挨拶にしかついて行かないらしく。

去年も結城と宿題合宿という名のお泊まり会をしていたと教えてくれた。

そして、今年は桃原と2人でしたいんだと、はにかんだ彼。

お泊まり、ということは。

当然……一線を越える可能性があるわけで。

宿題を一緒にできるのは捗るだろうし助かるけれど、やっぱり戸惑いは隠せなかった。

私は電車に揺られながら、両親の許可が下りたらと二ノ宮に伝えて。

帰宅後、正直に彼氏の家に泊まりたいと言えず、友達数人と泊まりで宿題しに行きたいと嘘をついた。

両親は快くOKしてくれて、持っていたはずの罪悪感は、時間が経つと、二ノ宮と2人だけのお泊まりという甘く幸せなパワーに負け、胸の奥へと追いやられた。

そうして現在に至るわけだけど……

お邪魔する時、いつもいるご家族がいないという状況の、彼の部屋は想像以上に落ち着かない。