そんなことないよ、なんて嘘をついてもバレるだろう。
だって、彼は見ていたから。
私があの場を離れたのを。
そして、その理由が自分なのではと気にしていて。
だから、䋝田先輩が私を呼び止めたのだ。
「……ちょっと、だけ」
正直に伝えると、二ノ宮は遠慮がちに笑みを浮かべた。
「でも、二ノ宮だって大変なのに、私こそ理解が足りなくてごめんね」
私からも謝罪する。
そうすれば、彼は「あのさ」と口元を緩めて。
「桃原がヤキモチやくの嬉しいって言ったら怒る?」
そんなことを聞いてくる。
改札機を通過したところで、私は苦笑しながら首を横に振った。
「怒らない。わかるから」
そう。それは、わかる。
けれど、わからない……というか、どうするつもりなのか知りたいことがある私は、ホームへの階段を昇りながら言った。
「でも、合コンは困るかも」
すると、二ノ宮は僅かに目を丸くする。