二ノ宮が……?
確かに、ちょっとヤキモチ妬かれたことあったけど。
「そんな風には見えないけど……」
面白くなさそう、とか。
不貞腐れたり、機嫌悪く見られたような記憶はない。
だから、そう零したら、䋝田先輩は笑った。
「そりゃ、恋愛フィルターかかってるからだろ。補正だの修正だのかけてたら本当のアイツは見えない……つーか、千尋の場合はうまいからな、隠すの。美羽ちゃんには見せないようにしてんのかも」
恋愛フィルター、か。
確かに、好きという気持ちが本来なら見えるものを曇らせて見えにくくしている可能性はあるかもしれない。
要は、恋は盲目というものだ。
チラホラと選手たちが行き交う廊下を進むと、やがてお手洗いのマークが見えてきた。
「でも、さすがの千尋も、美羽ちゃんへの気持ちだけは冷静に対処できなかったんだろうな。だから、リスク侵す道を選んだんだろ」
私たち2人にしか聞こえない声量で䋝田先輩が語るそれは、二ノ宮の気持ちと、覚悟。



