「じゃ、俺も」
䋝田先輩は、私から手を離すとゆっくりと歩き出す。
「女の子たちはいいんですか?」
先輩の半歩後ろを歩きながら尋ねれば、彼は横顔だけで振り返ると。
「美羽ちゃんの方が大事っしょ」
目を細めて笑った。
そして続ける。
「千尋は、今頃悔しがってるだろーな。女の子たち振り切って、落ち込んでる可愛い彼女を抱き締めてやれねんだから」
ああ……そうか。
䋝田先輩は、伝えに来てくれたんだ。
二ノ宮が、私を気にしていたことを。
だけど、追えば疑われるから、動けないのだと。
嫉妬心に振り回されて、二ノ宮の気持ちを全然考えてなかった。
ダメダメ過ぎて凹んでいると、䋝田先輩が私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「アイツ、否定してなかったんだから、許してやれよ」
「もう、許してます」
䋝田先輩が気づかせてくれたから。
そう心の中で続けて、私は乱された髪の毛を手で整える。
すると、䋝田先輩は楽しそうにニヤついた。
「千尋も、いつもそんな感じだぞ」
「え?」
「美羽ちゃんが他の男と喋って楽しそうにしてると、面白くなさそうな顔すんだよ」



