喜びで声をうわずらせながら「ありがとうございます」と䋝田先輩に頭を下げた。

続いて、二ノ宮もお礼を口にする。

そして顔を上げた時、先輩は少しだけ難しい顔をした。


「ひとつ忠告な。内緒で付き合って、それで我慢とかして不満たらしてんなら楽しくなくなるぞ」


バスケも、恋愛も。


どこか冷たく尖った声で言って、䋝田先輩は二ノ宮に早く風呂に行こうぜと声をかける。

彼の忠告に二ノ宮は少し戸惑いを見せているけれど、私に「また後で」と声をかけて、䋝田先輩を追った。

本日二度目の危機を脱して、私は肺の中が空になるほどに息を吐き出す。

けれど、䋝田先輩が最後に残した言葉だけは吐き出されることはなく。

いつまでも、心をチクチクと刺激し続けていた。