食べるって、二ノ宮を!?

と、驚いてからケーキを眺めていたのを思い出し私は慌てて首を横に振った。

いけない。

うっかり幸せな過去に意識がトリップしてしまった。


「じゃ、食べ物ばっか見てないで行くか。お、あの子なかなか可愛いじゃん」


䋝田先輩は、道路を挟んだ反対側の歩道を歩く大学生くらいの女性を見て、機嫌良さそうに話す。


「先輩も、女の子ばっか見てないで行きますよ」

「もちろん1番可愛いのは美羽ちゃんだけどな?」

「はいはい」


恒例のやり取りを行いながら必要な物を購入して。

全て揃ったところで、荷物を両手から下げた先輩が「ところでさ」と歩きながら私を見た。


「最近、千尋の邪魔の仕方がえげつないんだけど」

「なんの邪魔ですか?」

「俺の美羽ちゃんへのアピールに対する邪魔の仕方だよ」


バスケ関連の話かと思えば、まさかの私絡みで一気に緊張が走る。

暑さによるものではない汗が、ジワリと吹き出すのを感じた。


「さっきもさ、俺と買い出しに行くってなった途端、桃原に何かしたらインハイに出られなくしてやるって脅されたわ」


に、二ノ宮……それは確かに前よりも攻撃的になってるよ!

しかも何だか䋝田先輩の視線が疑いの色を滲ませていて。


「てかさ、お前ら、もしかして──」


やばい、と感じた私は咄嗟に嘘をついた。