「どーした?」

「あのケーキ美味しそう」


ショーケースの中に並ぶ色とりどりのケーキに目を奪われながら、私は、二ノ宮に誕生日のお祝いをしてもらった時のことを思い出した。


日曜日、午後から二ノ宮の家でケーキを食べて。

プレゼントのネックレスをちゃんとつけているよと、向かい側に座る彼に見せたら「似合うよ」って褒めて喜んでくれた。

そして、空になったお皿を見ながら彼は言ったのだ。


『ケーキ食べるだけじゃお祝い感ないなー。あ、もうひとつプレゼントあげようか』と。


もちろん私はすぐに断わった。

もういいよ、充分だからと首を横に振って。

だけど二ノ宮は、なぜか私の隣に腰を下ろし……


『もらってよ』


頬に、唇に、口付けた。

プレゼントの意味がわかったのは、互いの唇をたっぷりと味わってから。

甘い幸福感で満たされて、私は確かに彼の愛情を唇から受け取った──


「美羽ちゃん、そんなに好きなの?」

「もちろん好きです……」


だからこそ、唇を重ねるだけで蕩けるほどに幸せな気持ちにな……


「じゃあ食べてく?」

「えっ!?」