動揺してはいけないと思えば思うほど、心臓が早鐘を打つ。

何も答えられない私の代わりに二ノ宮が軽く笑って。


「別に普通? っていうか、そう見えました?」


落ち着いた振る舞いで䋝田先輩に質問した。


「んー、なんかなー、前と雰囲気違う気がすんだよな」


私たちを交互に見ながら、先輩が声を零す。

……なんて鋭い人なの。

そっと呼吸を整えて、私は「そうですか?」と無関心を装った。

そうすれば二ノ宮が再びフォローに回ってくれる。


「それ、䋝田先輩の頭ん中が女ばっかりだからじゃなくて?」


とても自然に、いつものように冗談を口にした。


「バスケと寝ることと遊ぶことも入ってるっつの」

「勉強ゼロって」


受験生のセリフとしてどうなんだと二ノ宮が笑えば、䋝田先輩の興味は私たちから逸れたようだった。

二ノ宮のおかげ今回は助かったけど、これが私1人だったらと思うと恐ろしい。

今後、もし疑われたらどうやってかわすか考えておかなければ。

前を歩く2人の背中を追いかけながら、私は頭を悩ますのだった。