「部の掟もあるし、付き合いたいとかそういう話じゃなくて、ただ……気持ちを伝えておきたかった……だけ、のはずが、ごめん」


照れながら弱々しく眉を寄せた彼を、私はひたすら見つめながら、その言葉を受け止める。


「桃原の気持ち無視して、あんなことしてごめん」


謝られて、私は言葉ではなく首を横に振って応えた。

嬉しすぎて、どう答えていいのかがわからないのだ。

それでも、謝って欲しくないという気持ちだけは強くあった。

けれど、二ノ宮は再び「ごめん」と声にして……


「もしお前に好きなやついても、そいつに渡したくないから、だから、引退するまでまだあるけど、その間に俺のこと好きになってもらうように頑張らせてもらえる?」


努力することを宣言した。

私の好きな人は、二ノ宮だ。

そんな努力、しなくてもいい。

私は再度頭を振ると「必要ないよ」と伝えたのだけど。


「……あ、ああ……そうか、何しても無理って」


言葉の意味を勘違いされて、慌てて彼の半袖Tシャツの袖口を掴んだ。


「そ、そうじゃなくて! 頑張らなくても……もう、二ノ宮のこと……好き、だから」


顔から火が出そうなくらい恥ずかしくなりながも、どうにか自分の気持ちを伝えると。


「──マジで?」


今度は、二ノ宮が驚いた顔をしたまま固まった。