翌日、約束の時間がやってきた。

レクリエーションは宴会場に集合とのことで、廊下には夕食を終えた生徒たちが移動を開始している。

私もその流れに乗って友人と一緒に宴会場へ向かった。

その途中。


「ごめん、トイレ寄って行くから先に行ってて」


私は嘘をついて、友人らと別れ一階、裏口の扉に近いトイレに入った。

1人、個室で息を潜めていれば、やがて廊下は静かになり、私はトイレから出るとそっと様子を伺う。

生徒はおろか、先生の姿も見えない。

今だ、と、私は早足で裏口へと急いだ。

……二ノ宮は、いるだろうか。

キスをしたのは約束より後だ。

もし、彼があのキスを後悔しているのなら、来ないのかもしれない。

もしそうなら、正直すごく辛いけど、部活中だけでも普通に接しよう。

私はそう決めて、緊張しながら裏口に到着すると、黒い井桁格子の引き戸に手をかけた。

カラカラと音をたて外に出ると、視界の端に影が動いてそちらへ視線を動かせば。


「……来てくれないかと思ってた」


苦笑する、二ノ宮がいた。