……さっきのは、夢?

疑って、胸元の手を頬に持ってきてつねってみる。


「い、たい」


思わず声が漏れるほどに痛かった……ということは。

これは現実で間違いなく、つまりは。

私は、二ノ宮と……


「キス、した?」


ひっそりと声にして、人差し指で唇に触れる。

そう、だ。

触れるだけのキスだった。

でも、なぜ、彼は私にキスをしたの?

ああ、嫌だ。

なにこれ、苦しい。

嬉しいのに、凄く苦しい。

好きな人と、人生初めてのキスをしたのに苦しいなんて。

だって、キスしたって私と二ノ宮に幸せは訪れないじゃない。

バスケ部の掟がある以上、付き合うことはできないのだ。

それは二ノ宮だってわかっているはず。

なら、二ノ宮はふざけたの?

流されただけ?

ううん……そんな人じゃ、ないはずだ。

じゃあ、なんで?