互いに避けているわけではない。

会えば挨拶もするし、用事があれば会話もする。

だけど、それは言うなれば知り合いのレベル。

そうしようと決めたわけじゃない。

でも、互いになんとなくそうしていた。

それが、いいと思っていたから。

また疑われたりしないだろうし、何より、想いを抱きながら接するのは、胸が締め付けられて苦しかったのだ。

それと……彼の心が、もう私から離れているかもしれないと思うと、怖かった。

現に、引退後も二ノ宮から何も連絡はない。

だからきっと……私たちはあの日を最後に、本当に終わってしまったのだろう。

痛み逃がすようにふと息を吐き出して、校舎に囲まれ切り取られたような青空を見上げる。

その時、校舎と中庭を繋ぐ出入り口から、柑菜が手を振って現れた。


「ごめーん! 遅くなった!」


申し訳なさそうに苦笑した柑菜に近づこうと、ベンチから腰を上げて。

歩き出そうとした、直後──

背後から私の腕ががしりと掴まれ、驚いて目を剥く。