咲き乱れる桜が風に揺れている。

薄紅の花びらがはらはらと舞い散るここは、あの日、愛しい人と別れ、ひとり泣き暮れた中庭だ。

あれから1年以上の時が過ぎ行き、今日、私は冬高を卒業した。

式は午前中に滞りなく終わり、その後アルバムの書き込みをお願いしたり。

とりあえずそれらも済んでひと段落した私は、柑菜と待ち合わせる為に中庭のベンチに腰を下ろして景色を眺めている。


あれから二ノ宮は、引退の日までかなり活躍をした。

結城から時々聞いていた話では、あれ以来部のみんなとのいざこざは特になく、どちらかというと別れたあと、愚痴をひとつも零さずバスケにうちこむひたむきな姿に感心していたらしい。

だから、二ノ宮は部長にもなり、部員を引っ張り、その後のインターハイやウインターカップでも好成績をおさめた。

スカウトの話もなくなるかと思ったけれど、完治後すぐに始まったウインターカップでは、彼のプレイは特に以前と変わらなかった。

その為、昨年のウインターカップで冬高男バスが準優勝を決めたすぐあと、スカウトは確定したと結城から聞いた。

そう、私はこれらの話を全て結城から聞いている。

二ノ宮から聞いたことは一度もない。

別れてから、私たちは必要以上に接していないのだ。