日々の努力を尊敬し、彼の生活が苦労ばかりでないことを密かに安堵していれば、二ノ宮がキュッと、繋いでいる手に力を込めて。


「桃原とも、問題なくこうして手を繋げるしね」


甘く微笑まれた。

しばらく二ノ宮とこんな風に触れ合っていなかったせいか、至近距離の王子様スマイルに私の頬が熱を持つ。

すると、その時。


「よー、お前ら。楽しんでるみてーじゃん」


腕を組み、ニヤニヤしながら声をかけてきたのはジャージを着て頭にハチマキをした䋝田先輩。

二ノ宮は先輩に「ども」と軽く挨拶して。


「おかげさまで。腑に落ちてはないんですけどね」


と、愚痴を零した。

䋝田先輩はそれだけでなんとなく察したようで、私に一瞬だけ思いやるような笑みを向ける。

けれどすぐにまた自信たっぷりの笑みを浮かべた。


「まーまー、今を楽しめばいいんだよ。てことで、奢るから焼きそば食べろ焼きそば!」


そう言って、すぐ近くに設営されている䋝田先輩のクラスの模擬店に案内された。