「部長はわかるけど、部のみんなが何で納得したの?」

「ご褒美、なのかな?」


咄嗟に思い浮かんだ言葉は、二ノ宮の疑念を晴らせなかったらしい。

黄色い花びらが風に乗って私たちの頭上からチラチラと降る中、二ノ宮が不安そうに私を見つめる。


「……桃原、何か隠してる?」


隠してないよ、なんて。

堂々と嘘をつけるほど強くもない私は、笑みを作った。


これは、私だけの秘密。

二ノ宮に別れは告げる。

でも、それが二ノ宮の為だとは伝えない。

押し付けたくないのだ。

重く感じてほしくもない。

私が勝手に決めて、秘密が暴かれないように鍵をかけるの。

だから。


「お願い」


これ以上、何も聞かないで。


「文化祭が終わるまで、二ノ宮の時間を私にください」


これ以上、暴こうとしないで。