紅白戦後、反省会を終えた私たちは各自片付けを始める。

その傍らで、私はスコア表をチェックしつつまとめていたのだけど。


「桃原の字、可愛いよね」


モップ掛けをしていた二ノ宮が、モップを手にしたまま私の手元を覗き込んだ。


「そ、そうかな?」

「うん、可愛い」


いつもより近い距離で可愛い、なんて言われて。

文字の事とはいえ、照れてしまう。


「ありがと」


二ノ宮って、人を褒めるのが上手い。

それこそ、勘違いさえしてしまいそうなレベルで。

二ノ宮の言葉に、今日もこっそりドギマギしていると、ふと二ノ宮の視線が私に向く。


「ところでさ」


覗き込んだままの距離とさほど変わらない体勢で話を続けられ、さらに加速する鼓動を感じながら二ノ宮を見つめ返した。

普段はほんのりと笑みを乗せたイメージの強い二ノ宮だけど、今は真面目な顔をしていて。

もしかして、部の関係かと思い浮ついた心を引き締めれば。


「さっき三輪と何話してたの?」


予想の斜め上を行く質問をされた。

一瞬、理解が追いつかなくて間が空いてしまう私。